動画広告はテレビの「山場CM」に学べ

萩原 雅之 氏
ネットレイティングス株式会社
代表取締役社長

宣伝会議の週刊紙「アドバタイムズ」新年号に大企業25社の宣伝部長アンケートが掲載されていた。今年注目するメディア・広告手法として、ほぼ半数がインターネット動画広告をあげている。最近の動画やストリーミングを取り巻く状況をみれば当然だろう。

インターネット動画広告と言ってもひとつではない。ストリーミングの合間にTVCMのように挿入するもの、広告にもプレイボタンがついていてユーザーの意思で視聴するもの、そして今年から大型化したYahoo!のトップページの広告枠(ブランドパネル)も動画広告枠としての注目が高まっている。YouTube 内の自社専用ページ(ブランドチャネル)、そして企業自身のサイトも有力な動画メディアと認識されている。

現段階では、動画広告の定義だけでなく、見せ方もメディアも多種多用で試行錯誤段階にある。長い歴史があり広告の仕様が標準化しているテレビCMと大きく異なるところだ。そして動画広告やストリーミングのマーケティング活用が定着できるかどうかの鍵は、そのフォーマットが視聴者に好意的に受け入れられるかどうかにかかっている。

インターネット広告の歴史は、次々に登場する新技術と利用者の受容度との関係の歴史でもある。例えば検索連動広告が登場したばかりの頃、私は普及しないだろうと思っていた。検索結果の中に広告がはいるなんてとんでもない、利用者は許さないと考えていたのだがどうやら固定観念にとらわれていたようだ。検索連動広告の成功は、ネットユーザーがそれを広告ではなく、適切なタイミングで提供される有意義な情報として認知したからである。

一方で90年代には、フレームでバナー広告を固定して強制視聴させたり、コンテンツの上にかぶさったり動き回ったりするようなFlash広告もずいぶん出たが、結局、受け入れられず消えていった。

このようにメディアと広告との関係では、何よりも広告の提供者と視聴者の「暗黙の了解」が不可欠である。テレビCMは「トイレタイム」といわれながらも、広告主とテレビ局と視聴者は50年以上にわたり幸福な関係にあったといえる。視聴者は無料で番組を楽しむ代わりに番組がCMで中断することを「了解」しているし、CMで好感を持った商品は店頭で手に取ってくれるからだ。

しかし近年、この幸福な関係が危機にさらされているようだ。「正解はCMの後で」あるいはドラマの盛り上がり部分に水を差すようなタイミングでCMを入れる「山場CM」と呼ばれる手法が蔓延しているのはご存知の通り。この山場CMを多数の消費者が不快に感じたり、その商品を購入したくないという研究結果が発表されている。山場CMは日本では全体の約40%に達するのに対して、CMの入れ方まで規制のある欧米では、アメリカ14%、イギリス6%、フランスは0%である。(※注1)

この話題は昨年、多くの新聞やブログに取り上げられたが、「テレビCM崩壊」は、CM飛ばしが問題視されているHDDレコーダーではなく、この単純な事実に気づいた広告主離れから起こる可能性もある。

ネット上の動画広告も、そのサイトを見ている視聴者の目的と異なるものが視界に入ってくるという意味では、もともと「土足的」なものだと謙虚に考えておく必要がある。感情に訴えるリッチコンテンツは、テキストや画像のみの広告に比べてはるかにそのリスクは高い。リーチはもちろん大切だが、どんなに多くの人にリーチしても効果がマイナスであったらむしろ損失を拡大させてしまう。それでは何のための広告なのか。

あなたが不快と思う広告フォーマットやマーケティング手法は、あなたの顧客も嫌いなのである。ネット動画広告という生まれたばかりの大切な市場は、ぜひ王道を歩んで欲しいと思う。


※注1:「正解はCMのあと」は逆効果 視聴者86%「不愉快」
                         (asahi.com 2007.11.06)
http://www.asahi.com/culture/tv_radio/TKY200711060131.html


(2008/01/16)

■萩原 雅之 氏プロフィール紹介■
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1984年 3月 東京大学教育学部卒業
1984年 4月 株式会社日経リサーチ入社
1991年 2月 日経ヨーロッパ社(ロンドン)へ出向(~94年5月)
1997年 11月 株式会社リクルートリサーチ入社
1999年 11月 ネットレイティングス株式会社代表取締役社長(現任)
2004年 4月 株式会社マクロミルネットリサーチ総合研究所所長(現任)

ネットレイティングス株式会社のHP
http://www.netratings.co.jp
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