![]() ジャパン・エア・ガシズでは、「企業文化創造プロジェクト」の一環として2004年7月、東京・品川で行われた「社員集会」をリアルタイムでライブ中継。いまある社の課題や企業ビジョンなどを「リアル」と「バーチャル」を巧みに組み合せ全国の社員で共有。さらに、社員のさまざまな疑問や課題に対する経営側回答を、音声とスライドショーを組み合わせたコンテンツとしてまとめ、2004年末に配信した。 ※ストリーミングコンテンツは、ジャパン・エア・ガシズ社内での視聴のみとなります
ジャパン・エア・ガシズ株式会社
産業用・医療用ガスを製造、販売で長い歴史を持つ日本エア・リキードと大阪酸素工業が2003年統合、ジャパン・エア・ガシズとして新たにスタートした。世界のトップメーカー、エア・リキードグループとBOCグループの技術・インフラを活用し、質の高い製品、サービスを提供し続けている
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ナレッジ共有の成否は、業種や規模を問わず、企業経営の重要な要素である。今回の事例紹介では、ストリーミングを活用し、ナレッジ共有で成功を収めた例を紹介したい。そこからは単にナレッジ共有の範疇にとどまらず、ライブ中継の効果的活用、オンデマンドの活用意図、他のメディアとの連動性など多くの示唆を与えてくれる。
ジェパン・エア・ガシズは、食品産業から宇宙開発まで、幅広い業界を対象とする産業・医療ガスの大手メーカー。同社は、2003年1月に「日本エア・リキード」と「大阪酸素工業」という同業2社が統合し新しく誕生した。2002年9月の統合発表から新組織までわずか3ヶ月半――統合後は、旧二社のシステム運用を行いながら新しいジャパン・エア・ガシズとしてのシステムに統合するという「二足のわらじ」を履かなければならなかった。
そのためジャパン・エア・ガシズでは、統合一年後に 「企業文化創造プロジェクト」を発足させ、単に二社の文化の融合ではなく、新しい独自の企業文化の創造に取り組むこととなった。プロジェクトを通じて重要なファクターであったのが、受け身でなく社員全員が認識を一つとし、積極的に参加してもらうことであり、そのためには、より参加意識のもてる社内でのナレッジ共有の実現を模索した。
「企業ビジョンと目的の明確な共有」――発信した情報を正しく理解してもらってこそ、コミュニケーションは成立するものだが、統合直後は、「各部門での業務範囲がわからない」「複数の書式が錯綜する」といったことから「企業ビジョン」まで、共有すべき情報は実に膨大であった。当然、従来の方法だけでは情報が多すぎて咀嚼しきれないという問題が起こることも予想された。
「直接コミュニケーション」をストリーミングで演出「企業文化創造プロジェクト」では、直接コミュニケーションの場を重視し、担当者が全国の営業拠点をまわってヒアリングを行っていた。しかし、全国200ヶ所、2,000人以上との接触は難しく、効率化のためには当然メディアの有効活用が必要となってくる。統合前から実施していたナレッジ共有としては、 (1)社内ポータルサイト (2)社内メール (3)社内報(冊子) という手法があり、これらは統合後も継続して実施していた。しかし、上記のようなツールを使い効率をあげる一方で、スポイルされている部分があることも感じており、それでは道半ばであるとも思っていた。最終的に共有されるべきは、単なるデータ的な情報だけでなく、企業ビジョンの共有である。経営陣の生の声や人間的側面など、文書ではこぼれ落ちてしまう情報までをも提供することこそが、プロジェクトの成果の違いを生む重要な要素となる。 そのためには、直接コミュニケーションに勝るものはなく、これをなんとかWeb上での演出で実現することはできないだろうか、とジャパン・エア・ガシズでは考えた。 そこで、ストリーミングの登場である。前出3つのメディアが持つ即時性、検索性のよさ、手軽さをそのままに、ストリーミングの活用により、話し手の顔が見える、語りかけるような情報発信を盛り込むことで、直接コミュニケーションを演出し、対面同等の効果と格段の効率性の双方を実現させようと企画したのだった。 |
映像のもつ生々しさがナレッジ共有に躍動感を与える社内ポータルサイトもメールも社内報も、「すべて導入済み」という企業は多いだろうが、今回の事例で興味深いのは、ジャパン・エア・ガシズでは、ストリーミングの活用により情報の生々しさを常に保ちつつメディアの相互作用を促し、ナレッジ共有を成功させていったことである。 例えば、「リアル」と「バーチャル」の巧みな組み合わせとストリーミング活用。具体的なナレッジ共有の流れとしては、まず、全国で4人からなる30の小チームを組織し、各チームで現状把握、改善できる点、解決策について話し合った。2004年7月、全国から120人の代表と役員が集い、東京で「社員集会」を開催。各チームが持ち寄った個々が考える自社への想いを題材に、社員同士の「直接コミュニケーション」で今後の改善方法について語りあった。 ここで「バーチャル」の出番である。社員集会の模様はライブ中継され、社員専用ページより全国の支社で同時に会議の様子が見られるようにした。ライブ視聴ページには、掲示板を設け、自由に発言ができるようにした。集会中に掲示板の意見を紹介することで、ライブ視聴者と会場に一体感が生まれ、会議の臨場感を全社員で共有する雰囲気が生まれていった。 ライブ中継映像はテープに収め、後日、1ヶ月間のオンデマンド配信を行うことで、ライブ中継を見られなかった社員に対しても情報格差を与えないフォローを行い、アンケート回収率は、企業内アンケートでの平均値と比べてもはるかに高い数値となって現れた。 社員集会のライブ&オンデマンド配信から3ヶ月後の12月、社員各人に新しい企業文化に関するイメージの概要がつかめたところで、会社側からの回答がなされた。社員の声、結果とともにそれに対する経営陣側の見解をまとめ、統括と今後のビジョンをオンデマンドストリーミングで発信し、社内ポータルサイトより視聴できるようにした。全国の社員は、同時期にそのコンテンツを見て、今後のビジョンを共有する。このコンテンツには、通常の10倍近いアクセス数があったという。 |
2,000人の会社員が参加し共有できる仕組みが実現ストリーミング導入前に心配されたのが視聴環境であったが、事前の視聴チェックを実行することでクリア。ストリーミングコンテンツへの感想を寄せた社員も多かった。ナレッジ共有への関心の高まりは、ストリーミングの活用により、「企業文化の創造」という難しい課題にも活発に取り組む空気を生み出したのだ。 「通常業務との兼ね合いの点からも、全社員2,000人が集う会議というのは、現実的ではありません。しかし、ストリーミングを活用することで、全社員が参加し共有できる仕組みが構築可能となりました」 リアルタイムで意思決定のプロセスから共有することにより、その行為自体がメッセージとなり、見る側の参加意識を高めていく。会場へ集い、直接コミュニケーションでしか実現しないと思っていたナレッジ共有が、いつもの職場、いつもの席で情報を受け取れるストリーミングにより、高い費用対効果を伴いながら実現可能なのである。 今回のストリーミング活用により、情報の受け手である社員だけでなく、発信側に立った経営者にも、全社員との一体感を感じた、という手ごたえを感じているという。今後一層、社内のIT環境強化を検討し、新たなストリーミング活用も計画していきたいとのこと。ストリーミングを要所に配することで「繋がり」を演出できるという認識が生まれているのだ。【文中敬称略】 |